胸部X線検査(胸部検診)
X線により胸部(肺、心臓、大動脈、脊椎等)を調べる検査です。
胸部X線検査では、肺がんの他、結核、肺炎、気胸、胸水、心肥大、大動脈瘤、側弯症、骨折などの異常が見つかることがあります。また、古い炎症のあとや手術した痕跡など通常はみられない所見があるものの、詳しい検査や治療が必要ないと判断されることもあります。
X線写真は一方向のみの画像で評価するため、正常か異常か判断しにくいこともあります。明らかな異常所見の他に、念のために精密検査を勧める場合もあります。
主な所見
- 胸膜肥厚
- 肺を包んでいる胸膜が肥厚した状態です。細菌やウイルス等による炎症が治ったあとで、過去の胸膜炎や肺感染症が考えられます。大半は心配のない所見です。
- 肺のう胞
- 肺胞の壁の破壊や拡張によって、接する肺胞と融合し大きな袋になったものです。これが破れて気胸を起こすこともあります。喫煙は控えてください。
- 治癒巣
- 以前にかかった呼吸器疾患が治ったあとがみられます。年に一度は健診を受けるようにしましょう。
- 肺結核
- 結核菌による感染症で肺に明らかな病変があるものです。病状により痰に結核菌が出ていることもあります。治療を確実に続けることが必要です。
- 手術影
- 胸部の外科手術後にみられる変化です。胸郭や肺などに変形や金属物による縫合等のあとがみられます。
- 炎症性瘢痕
- 肺の感染症が治ったあとに、小さな痕跡の陰影が残ることがあります。
- 良性腫瘍
- 気管支、肺実質、血管、胸膜などから発生し、肺腫瘍全体の2~5%を占めます。一般的には無症状で、胸部X線や胸部CTで異常陰影として発見されることが多いです。
- 気管支拡張症
- 繰り返す気管支の炎症により、気管支内腔の拡張を特徴とする慢性肺疾患です。カルタゲナー症候群など先天性のものもあります。
- 慢性気管支炎
- 気管支粘膜に慢性の炎症を起こす疾患の総称です。喫煙が原因となることが多いですが、細菌感染によって起こるものもあります。
- 肺気腫
- 主に喫煙による影響のために肺胞が破壊されて拡張し、細気管支の狭窄や閉塞を伴う疾患です。
- 肺線維症
- 肺胞を取り囲む間質が線維化を起こし、肺活量の低下を起こす疾患です。粉じんの吸入や膠原病の合併症としてみられますが、原因不明(特発性)のものもあります。
- 中葉症候群
(ちゅうようしょうこうぐん) - 右肺の中葉に無気肺や慢性炎症をきたして生じたものです。慢性の咳嗽、喀痰、喀血、発熱等の症状が出ることもあります。
- 舌区症候群
(ぜっくしょうこうぐん) - 左肺の舌区に無気肺や慢性炎症をきたして生じたものです。慢性の咳嗽、喀痰、喀血、発熱等の症状が出ることもあります。
- 無気肺
- 気管支が腫瘍や炎症、異物などにより閉塞し、肺胞から空気が抜けてしまい、部分的に肺が縮んだ状態です。
- 塵肺
(じんぱい) - 粉じんが肺組織に沈着して肺の線維化を起こす疾患です。大量の粉じんが長期に渡って吸入されると起こります。
- 横隔膜拳上
- 横隔膜が上のほうに上がっている状態です。横隔膜神経の麻痺、横隔膜弛緩症、肝腫大、横隔膜ヘルニアなどでみられます。
- 右側大動脈弓
- 大動脈弓(上行大動脈が反転して下行体動脈に移行する部位)は、正常では体の左側にありますが、これが右側にある状態です。
- 大動脈突出
- 大動脈の上部はループを描いて走行していますが、そのループが大きく拡大している状態です。動脈硬化などの場合にみられます。
- 右胸心
(うきょうしん) - 生まれつきのもので、本来は胸部の左側にある心臓が右側にあります。
- 内臓逆転症
- 生まれつきのもので、内臓が左右逆に配置されている状態です。
- 奇静脈葉
(きじょうみゃくよう) - 生まれつきのもので、奇静脈という血管が発生する途中で肺を横切ったために、右肺の上部が2つに分かれている状態です。
- 横隔膜ヘルニア
- 横隔膜に孔(あな)ができ、その孔(あな)によって腹腔内の臓器が胸腔や縦隔に逸脱している状態です。生まれつきの場合と、他に原因がある場合があります。
- 結陽陥入症
- 横隔膜と肝臓の間に結腸などが入り込んだ状態です。筋疾患と関連していることもあります。
- 肋骨影
- 肋骨に少し太い部分があるなどして、他より濃く映ってしまいそこに異常があるように見えることがあります。
- 骨折影
- 骨折後の所見として、骨折線が認められたり骨の破断や離解がみられます。
- 脊柱側弯
- 背骨が左右どちらかに弯曲している状態です。
- 板状無気肺
- 肺の末梢の細い気管支の閉塞などによって、小さな領域の無気肺が線上の陰影としてみられる状態です。
- サルコイドーシス
- 原因不明の全身疾患で、特に肺・眼・皮膚・心臓に罹患することが多いとされています。専門医で経過観察や治療を継続しましょう。